ペパーミントキャンディ



 

 ソルギョング主演の韓国とNHKの共同制作映画。一人の男の人生を振り返る形で描く作品。1999年、キヨリ鉄橋で繰り広げられる20年ぶりの「カリボン蜂友会」(大学サークルらしい)の同窓会。楽しく踊る中年達の中に乱入して狂ったように踊る男が・・・。それがキムヨンホ(ソルギョング)だ。最初は戸惑う同窓生達も、同窓生のヨンホだと知って、友に飲み。踊る。しかしヨンホはまるで狂ったように生気をなくしていた。気づくと彼は高架橋の上に立っていた。正面のから列車がやってくる。彼はまさに死の直前に叫びます。「帰りたい・・・あのころに帰りたい・・・」

そこから三日前「カメラ」、1994年夏「人生は美しい」、1987年夏「告白」、1984年秋「祈り」、1980年五月「面会」と人生がさかのぼって行き、最後に戻りたかった1979年「ピクニック」へ・・・彼の人生は少しずつ歯車が狂ってしまっていた。それはあまりに切ない結末へと進んでいった。彼の人生は列車の線路を逆にたどる事によって繰り広げられる。たくさん分岐点もあったはずだ。しかし・・・戻る線路はもう辿ってしまった決まった路しかなかった・・・・


 ネタバレ追加


 この映画は韓国の歴史的背景がかなり影響している男の話です。同世代の人にはどこか似通った人生を送った人もいるのでしょう。韓国では大ヒットをしたらしいです。20年間ヨンホ役をソル・ギョングがやっています。やはりすごい俳優です。物語が進むに連れ、彼も物語と同じように若返っている気がしました。違和感は感じませんでした。

三日前・・・ヨンホはありったけのお金で拳銃を買います。自殺するためでした。自分の人生を狂わせた人を一人だけ殺して自分も死のうと考えていました。誰がいいのか・・・「俺の金を紙くずにした株やか・・・暴利をむさぼったサラ金野郎どもか・・・共同事業をもちかけて金を持ち逃げした友人か・・・それとも別れた嫁と子供を道連れに?」この言葉で一体彼になにがあったのか分かります。ラジオで「カリボン蜂友会」の20年ぶりの同窓会の告知を耳にするヨンホ。彼は妻にも子供にも捨てられ一人だった。そんな彼の元に初恋の人ユン・スニムの旦那が現れ、スニムが危篤なので逢ってほしいと言われる。ヨンホは思い出の「ペパーミントキャンディ」を持って面会に行くが、もうスニムの意識はなくなってしまっていた・・・スニムに謝るヨンホ。足元をふらつかせながら出て行くヨンホに、古いカメラを「君のものだから渡してくれと頼まれた」と渡す旦那・・・ヨンホはそのカメラをほんの4万ウォンで売り、中のフィルムを全部出してしまって泣き崩れます。カメラ・・・これも大きなキーワードです。そしてタイトルにもなってるペパーミントキャンディ・・・この先はネタばれしすぎないように簡単に書いていきます。

1994年、韓国にも日本と同じようにバブルがあったのですね。まさにバブルの寵児になり、社長をしているヨンホ。しかし奥さんの浮気現場をみつけてしまってり・・・自分も秘書と浮気をしていたり・・・心は満たされていないのがわかります。次々と下っていく時代。そのたびごとに出てくるキーワード。「カメラ」はどういう意味があったのか。「人生は美しい」という言葉は誰が言ったのか。初恋の相手ユン・スニムは彼の人生の中でとても大事な存在だったのは見てるうちに分かります。しかしどうして彼女に辛く当たるのか。なぜビョンホは足をひきずってるのか。そして、あのすさんだ性格はもともとの性格なのだろうか・・・・

時代をさかのぼるごとに彼のすさんだ人生がよみがえり、そしてついに彼の人生の歯車を狂わせた1980年に・・・。彼が兵役に行ったその時代はまさに「戒厳令」の最中だった。彼に会いに来たスニムは、戒厳令中なので彼に会えなかった。彼女はペパーミントキャンディと一緒に手紙を送るしか出来なかった。そんな中ヨンホは取り返しのつかない過ちを犯してしまう・・・。

彼の性格は「光州事件」の起こったあの兵役時代ですっかりすさんでしまった。歯車を狂わせ路線を間違えてしまった。そして、バブルに踊らされ全ては崩壊してしまう。時代に人生を狂わされてしまった。

1979年の大学のピクニック・・・彼はとても純真な自然を愛する青年だった。そしてスニムと淡い恋を暖めていた。ヨンホは「ここはいつか来たような懐かしい気がする」という。スニムは「夢でみたんじゃないかな?」と返すが、まさに電車の前に立つ20年後の彼が1979年の記憶にもどり、そこに居るヨンホは当時のヨンホであるとともに、20年後のヨンホでもある。人間は死ぬ前に走馬燈のように過去が思い出されるという。彼はまさに一瞬のうちに人生の一番幸せだった兵役前の・・・20年前のピクニックに記憶が戻っていたのだろう。そしてその幸せな光の中で命の灯火がきえていく・・・・彼は「誰かを道連れに死ぬ」と言っていた。彼が自殺に踏み切ったのは・・・彼の心の中に残る一番美しい思い出のスニムの死とともに自分も終止符を打とう・・・そう思ったのでしょう。そして思い出をさかのぼりながら消えていく・・・切ない話でした。その時代を生きた人でどのくらいの人が彼のように時代に人生を壊されてしまったのでしょう。その多さが、この映画のヒットに繋がっている気もしました「ペパーミントキャンディ」


                 

 
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