なんと例の犬を鍋に入れて食べようとしていたのです。この辺のシーン・・・思わず目を閉じてしまいました。この管理人がいい味だしてます。っていうか、この映画、どの脇役も存在感あります。しかし善人は一人も出てこないです。(ヒョンナムだけが的はずれな正義感あるぶん救いかな?)悪人とまでは言わないけど、ユンジュも含め、皆どこか険悪感を感じる自己を持ってます。(生き方が下手とかけばいいしょうか?全員生き方が下手な気がします)
誰の中にでもある悪な自分を表に出した感じと言えばいいでしょうか?結局ユンジュは、犯人であるウルサイ犬を、かなり一癖ある飼い主のおばさんの目を盗んで捕まえ、マンションの屋上から捨ててしまうんです。それをたまたま目撃したヒョンナム。帽子で顔をかくした犯人を、懸命に追いかけるが、もう少しというところで取り逃がしてしまう。でもなぜ黄色いパーカーの帽子をかぶってヒョンナムは追いかけるの?思い切り笑ってしまいました。折しも、銀行強盗に応戦し、捕まえた女性職員がテレビに映ってるのを見て、じぶんもこの犯人を捕まえてテレビに出たい!と、闘志を燃やします。
一方、逃げ切ったユンジュは、教授になるための賄賂の話を持ちかけられます。その大金がなかなか作れなくて、イライラした日々が続いています(だからあんな事もしてしまったんでしょうね)しかし、相変わらず鼻で指図する嫁が、ウルサイ犬が居なくなってよかったと安堵した矢先に、犬を買ってくるのです。彼のストレスはもうピークです。嫌いな犬なのに犬のために「いちご牛乳」をコンビニまで買いにいかされたり、散歩に連れていかされたり・・・。しかし散歩の途中で、ふとしたきっかけで飼い犬を見失ってしまいます。激怒する妻に堪忍袋の緒が切れて逆ギレするユンジュ・・・・しかし・・・・そこで嫁のユンジュを教授にしてやろうという愛情のある計画を持っていたことをきかされます。必死で飼い犬を探すユンジュ・・・そこでヒョンナムと出会います。
この映画、こうやって書いてると、ただただネタばれストーリーを書くだけになってしまいますね。この辺でやめましょう。文章では通じない映像の奥に秘められたものがある映画です。先ほども書いた通り、善人は出ないんです。例えば、『見るからに性格の悪そうで、平気で良く鳴く犬をペット禁止のマンションで飼うおばさん・・・・彼女は実は身よりがなくて、その犬だけが彼女の生き甲斐だった。もともと悪かった病気のせいもあり、ショックで入院したまま亡くなってしまう。そして良くしてくれたヒョンナムに遺言状を書いてあり、その内容が「屋上に干してある切り干し大根をあげるよ」と書いてあった。』のように、善人とは言えない人の中にある人間らしい心で救うように見せて最後に、救い切らず軽く落とすというブラックジョークにも思える演出の折重ねの映画です。
最後まで誰も救われません。しかし、ひどく落ち込んで生活する人もいません。不幸をしょったり悪意をもった人も、結局は普通に日常を過ごします。大きな罪を犯したユンジュは、結局その罪が(告白しようとしたんですが、分かってもらえずそのままに・・・)露見することなく、賄賂で教授に。最初犬を探して張り紙の依頼に来た子供も新しい犬を飼っていて、その姿はとても可愛がってるようには見えない。結局被害者は可哀想な小動物「犬」で、人間は勝手だということが言いたかったのかな?もう少し上手に生きれば、何も事件は起こらないのに、下手なせいで一つ狂った歯車が大勢を巻き込んで来るっていく・・・・監督お得意の、趣旨をはっきり描かず、上手く言葉にできないけれど、どこか心に伝わる物は届いてるような。そんな映画でした。
ネット上では大絶賛の映画です。でもまみまみは「殺人の追憶」は好きだけど、あまり好きではないです。イ・ソンジェとペ・ドゥナの作品だから期待しすぎてたんでしょうか?でもボン・ジュノ監督の作品がはっきりしたハッピーエンドで終わるのもちょっとさみしいな・・・。ボン・ジュノ監督最初の作品にしてボン・ジュノ監督らしい作品と思えばこれでいい気もしてきました。終わりははっきりした形ではないけど、見ててだるいと思わせない映像はさすがでした。
「ほえる犬は噛まない」
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