悪い男



 

 うん。キム・ギドク監督らしい恋愛の表現ですね。キム・キドクの残酷な作品に見慣れたまみまみからすると、軽いジャブって感じで、痛く感じなかったです。他がもっと見てて残酷だからでしょうか。。きっとこれが初鑑賞作品だったら、痛さを感じたんでしょうが、ギドク監督らしい、純愛の映画なのかな?という感想。(ええーーーー??とか反対のコメントもらいそうですが。)もちろんかなり屈折した愛情ですけどね。

ヤクザ(というよりチンピラ)のハンギ(チョ・ジェヒョン)は街で一人の女子大生に一目惚れをする。ごくごく普通の女子大生ソナ(ソ・ウォン)は、彼氏と待ち合わせをしてるところだった。彼と合流し、仲良く街へ繰り出そうとした矢先、見知らぬハンギに路上でキスをされる。もがいて逃げようとしてもいつまでもキスし続けるハンギ。警備員に捕まえられ、ソナに謝れと詰め寄られるが、喋らない。そんなハンギにソナは唾をかけ、彼と立ち去る。それからハンギはソナをこっそりストーカーし始める。そして・・・・ソナを罠にはめ、多額の借金を負わせ、闇金融に無理矢理連れて行き、契約させ売春宿に売らせる・・・もちろん彼は全くソナの前には姿を現さない。売春宿に売られたソナが体を売るのをマジックミラー越しに見つめるハンギ・・・
 



 ネタバレ追加


 屈折してますね。最初は復讐??とも思ったけど違うんですよね。彼女を見ていたいんですよね。可哀想な事にソナはバージンだったんです。容姿の良さからすぐに客はつき、無理矢理部屋に。必死で抵抗するソナ。そこにハンギが助けに入って良かった・・・と思ったら、事態は全く変わらない。「初体験だけは好きな人とさせて」そうお願いするソナを付き合ってる先輩の元に連れて行く。車で「お願い、抱いて」と言うソナ。戸惑う先輩。やっと事が起ころうとした瞬間、ハンギと子分が車に乗り込んでいって、先輩を車から追い出す。「まだ終わってないのに・・・」そういうソナをそのまま売春宿に戻し、客と初体験をさせる。それも、マジックミラーの後ろで見つめるハンギ。本当に普通の幸せな女子大生が、売春婦になり、最初は嫌がっていたが、借金を返すため、生きていくため、売春婦にどっぷりはまっていく姿をただただ見つめるハンギ。ハンギは全然しゃべりません。いつも寡黙で何を考えているのかわかりません。でも確かにソナを愛している。しかし、不器用すぎて、あまりに屈折しすぎた彼の愛。

そして、ソナに恋したハンギの子分から、全てはハンギの陰謀で、借金も全てハンギの仕組んだ罠だった。売春宿に売られたのも、ハンギの筋書きだったと知ったソナは、心からハンギを憎みます。憎んで憎んで憎みきったハンギなのに・・・彼が警察に捕まって、死刑になると聞くと・・・ハンギに心惹かれてる自分に気づくんですよね。あり得ないと言えばそれまでですが、すごく人間の生々しい闇をうごめくような感情を描きつつも、どこか非現実的なギドク流メルヘンもあったような。あの、砂浜で拾った写真なんかもそうですよね。なんでいくら刺されても生きてるの?という疑問もありますが(笑)ギドクらしいちょっと皮肉なハッピーエンドだった気がします。密かに終盤、喧嘩の中、寡黙な彼が喋った時、オチを感じたのはまみまみだけでしょうか(笑)「悪い男」


                 

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