寵愛



 

 美しくも切ない愛の話。この映画はほぼ男女二人しかでてきません。そして最後まで二人の名前も出てこない。小説家の男と、ヌードモデルの女。男が、ある雑誌のインタビューを女にしたことから、二人は出会う。女は男の部屋に転がり込んできて、一緒に暮らすようになり、毎日体を重ね合う。とてもエロティックで官能的。しかしとても美しいです。白で統一され、壁一面がガラス張りの無機質だけど洗練された部屋。ベッドシーンは、有名な振り付け師の指導まで入ったというこだわり。AV並のかなり大胆なシーンなのに、すごく繊細で、細かい動きまで洗練されており、「美」を感じます。二人が裸で居るシーンはかなり多いです。女が見ても嫌悪感を感じない映像には圧巻。

男にはオ・ジホ。女にはイ・ジヒョンが出演しています。二人とも外見も体もとても綺麗です。オ・ジホは、日本で言うと、平井堅ぽい。金城武も入ってるかな?すごく引き締まった体の背の高い男性です。イ・ジヒョンは、スリムなのに、豊満な胸。まさにヌードモデルにふさわしいパーフェクトボディです。

二人は毎日からだを求め合うが、女は電話がかかると、急いで出かけてしまう。女には愛する男が居た。男はそんな女を責める事なくひたすら自分を押し殺していた。なぜなら男は愛に臆病だったし、愛を信じて居なかった。今の幸せが、女の行動に口出しすると無くなってしまいそうだったから・・・・



 ネタバレ追加


 女は体は大人で成熟しているけど、精神面は子供っぽい可愛らしさがあります。子供っぽいから、時々自分の感情を押しつけてくるし、愛する人が居ることを必死で隠そうともしない。男に聞かれないから、敢えて自分からその話しをする必要もない。女にとって男はすごく居心地のいい場所だと思います。愛する人に愛してもらえない苦痛から、自分の体を求めてくれる男の前では解放される・・・。酔うと、平気で男の前で愛する人への辛い気持ちをぶつけてきたりします。

男は、女と体を重ねるうちに、女を愛している事に気づきます。しかし、その愛をひたすら隠し、電話で出かける女を、ただただ部屋で待ち続けます。食事も作ってあげ、パンツにまでアイロンをかけてあげる・・・しかし、男は女のペットになってるって感じではありません。女が自ら男の可愛いペットとしてそこに存在しようとしてる・・・そんな感じでした。しかし、男の愛の感情が段々抑えられなくなってきます。自分は彼女の男ではなく、ただの「男」でしかないという、事実に苦悩し始めます。そして、彼女が撮影の時いたずらでスタッフに、自分の体に落書きをさせたのを見て、嫉妬からつい、自分の気持ちを表に出してしまうのです。見つかってしまった男の愛・・・・・

次の日、女がいつものように、電話の呼び出しで出かけ、体や顔が傷だらけになって帰ってきます。愛する人に傷つけられされたのです。心配する男に、女は罵声を浴びせます。男の愛も否定し、自分の報われない愛を嘆く女。男は女を抱きしめ、「愛なんてやめてしまえばいいんだ・・・」と、出て行こうとする女にすがりつくのです・・・・そして男はついに・・・愛の為一つの決断をし、罪を犯してしまうのです・・・

女は男を愛してなかったのでしょうか?愛して居たから、出て行っても、男の部屋に戻ってきてたんでしょうね。あまりに居心地が良くて男への愛に気づいてなかったんでしょう。それほど彼女の精神年齢は幼かった気がします。破天荒でお茶目で、見てるうちにどんどん可愛く見えていきます。そしてセックスの時の官能的な反応。このギャップがとてもいい。海辺で最後、二人で過ごすシーンも、じゃれ合う二人はとても可愛く、確かに愛し合っていた。女がその愛に気づく瞬間はとても切ない悲しい瞬間・・・・

こんなに美しい、体を求め合う映画は、韓国映画では初めて見ました。正直、韓国映画のセックスシーンはかなり嫌悪感を持っていたんです。あまりにリアルを追求しすぎて、美しさがないと。「ディナーの後に」も、こういうシーンが多かったけど、私的にはあまりに露骨で好きではなかったんです。この作品では綺麗でした。登場人物が少ない分、細やかに手の動きにまでこだわり、洗練された白い部屋。正直、最初は、あまりにも男が無口で感情を押し殺していたし、女は勝手気ままでベッドシーンばかりで、だるく感じたんですが、徐々に映像美に引き込まれて行きました。繊細な映像ばかりではなく、繊細な心を持つ男の視点から描いた美しくも切ない愛の話でした。「寵愛」


                 

 
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