シルミド



 

 これが作り話だったらきっと「友情に泣けて心打たれた良い映画でした」という感想だったのかもしれません。でもこれは実話なんですよね。心が痛くなります。

ソル・ギョングは、父親が北に亡命したせいで、共産主義と言われ、社会人になっても就職すらできず、結局ヤクザになるしかなくて、最後は殺人で警察に捕まる。そして、母を残し、死刑判決を受ける。同じ頃、北朝鮮の工作員が、国境を越え、韓国大統領の命を狙って韓国に侵入するという事件も起こっていた。死刑決行直前、見しらぬ軍人アン・ソンギが現れ、「父親の呪縛から解放され、国の為に刃物を握れるか?」と提案される。訳のわからないギョング。死刑は決行される。しかし、彼は生きていた。舟に乗ってシルミ島に向かわされていた。30人の同じ死刑囚がなぜか一緒に舟に乗っている。シルミ島についた30人は、お前達は韓国一の特殊部隊(シルミ島684部隊)になって北朝鮮のキム・イルソン主席の首をとってくるのが任務だ。と、告げられる。もし成功すれば、国家英雄となり、報奨金ももらえる。辞退すれば死刑囚に逆戻りだ。30人に残された選択は一つだった。そして彼らの過酷な訓練がはじまる。



 ネタバレ追加


 684部隊の訓練はまさに拷問だった。指揮を取る上官たちは彼らを全く人間扱いしない。最後に名前についての話がでてくるが、最後の最後まで名前が出てこない。それはまるで「軍人1」「軍人2」というように、全く情をはさまず彼らに訓練をさせる上官の態度からきたシナリオだったのでしょう。名前は出てこないけれど、様々な人間模様が伺える。第一組長にチョン・ジェヨン。血気盛んな男だ。第二組長のカン・シニルは落ち着いたおじさんだが、世の中のすいも甘いも知ってるベテランという感じだ。そして第三組長のソル・ギョング。ジョヨンは何かとギョングにつっかかってくる。精神的にも肉体的にも過酷な訓練が三年間続けられ、684部隊はまさに韓国随一の精鋭部隊に成長した。遂に任務決行される。北朝鮮に向かう684部隊。しかしその時、アン・ソンギ(684部隊最高上官)に「任務中止」の知らせがくる。

南北のに友好ムードが出始め、友好促進に、国家政策が変更されたのだ。今まで対北朝鮮の最高部隊として殺人兵器になった684部隊員。こうなるとただの殺人兵器でしかなくなり、国家のお荷物になってしまったのだ。「684部隊を抹殺しろ」それが国家からアン・ソンギに向けられた指令だった。苦悩するアン・ソンギ。しかし、もし抹殺しなければ、別の部隊がシルミ島にやってきて、684部隊のみならず、上官も命令に背いた罪で処刑される。つまり、684部隊の隊員はどっちみち抹殺される運命なのだ。この事実を部下である、ホ・ジュノ(チョ中佐)と、イ・ジョンホン(パク・中佐)に伝える。今まで684部隊に非情だったジュノであるが、激しく抵抗する。そう、彼は国家の任務に忠実に彼らを鍛えていただけで、今まで自分が育成してきた部隊をとても誇りに思っていたのだ。それに反して、今まで部隊と友好的だったジョンホンは、もうすぐ子供が生まれるのに自分まで一緒に死んでたまるかと、抹殺を決行すると意見します。この辺もいろんな人間に同情できて辛かったですね。抹殺を決行しようと言ったジョンホンには大事な家族が居るから、自分が死ぬわけにはいかなかった。ジュノは、厳しく嫌な奴だったけれど部隊員達を一番大事に思っている。そして・・・・ソンギもまた、一番上官という立場に悩み、不意打ちで隊員を殺したくなかったんでしょう。わざとギョングが盗み聞き出来るようにしてたんですから・・・・

結局ジュノを出張に出して、その夜作戦を決行するジョンホン・・・何も知らず出張に行くジュノと、ジュノの出張で今夜決行だと気づく、ギョング達。出かけるジュノに向かって三人の組長が走っていき、敬礼する姿にぐっときました。そして、結局その夜大襲激戦になります。先鋭殺人兵器の648部隊に勝てるわけがないですよね。でも・・・ソンギはわざと、ギョングにこの作戦を知らせ、そして部下に決行させたんですよね。部下は死んでもいいのかって?彼らは政府軍人だから任務を決行するのは当然だから遂行させたんでしょう。そして、ギョングを抹殺できる状況でありながら自害するんですよね・・・切ないな・・・

政府軍人である上官達を次々と倒し、最後はジョンホン一人・・・ジョンホンとの決戦で彼らは衝撃的な事をききます。

彼らには戸籍がなくなってるのです。もう死んだ事になってたんです。名前すらない、亡霊のような648部隊員・・・・なぜ戸籍がなくなってたか・・・それは最初から、キム・イルソン主席の首を取ったとしても彼らは抹殺される運命だった事を物語ってます。なんて非情な・・こんな事が現実にあったんですね。殺人者であり、死刑を宣告された彼らは、ただ、兵器として利用されただけなんです。648部隊の存在すら誰も知らなかったのです。

生き残った20人はこの事実を伝えるため、ソウルに渡り、バスジャックをします・・・最後の部隊員たちの同志である心のつながり・・・友情・・・切なかったです。皆で血文字でもう剥奪された自分たちの名前をバスの壁に書くシーンもなけたし、ジュノが出張に行くとき、部隊員に頼まれた飴ちゃんと買ってあって、それを落として助けようとバスに向かうシーンも涙誘いました。「シルミ島648部隊」の存在。そして「シルミド事件」は全て本当の話です。でも、戸籍のない彼らは、韓国軍のシルミ島648部隊としてではなく、共産主義武装勢力のテロ軍団として世間には報道されます。国家秘密が暴かれ、事実が露見した。それを元にして作られた映画「シルミド」。感動とかっていうより心が痛かったです。

                               「シルミド」


                 

 
※掲載写真の著作権は該当著作権者と所属事務所にあります。
 


まみまみの韓国ドラマ

目次へGO!
まみまみの韓国映画

目次へGO!
まみまみの楽天ブログ

へGO!