サマリア



 

 等身大の女子高生の援助交際をキム・ギドクが描くとあって、どうなるんだろうとかなり興味があったこの映画。ギドク監督らしさが十分に感じられた作品でした。「バスミルダ」「サマリア」「ソナタ」の三部作で、宗教色の強い作品。

「バスミルダ」では、二人の女子高生の危うい心を描いています。ジェヨン(ソ・ミンジョン)とヨジン(カク・チミン)は女子高に通う親友だ。二人でヨーロッパ旅行に行く資金を貯めるため、チャットで援助交際をしている。ジェヨンが客の相手をし、ヨジンが、客と取引し、化粧をジェヨンにしてあげ、ホテルの前で見張りをする。終わった後は、まるで清めるように、ジェヨンの体を銭湯で洗ってあげるヨジン。やってることは、かなりきわどい事をしてるのに、なぜか純真で美しく感じる。ジェヨンは、体を男に売りつつも、常に聖母を彷彿するような笑顔だ。そこに罪の意識はない。対するヨジンは、身は純潔だが、その罪の深さに悩み、男を汚らわしく感じている。二人の仲には愛情があった。それも、純粋ゆえの幼い無邪気な同性愛といえる。

男を相手にし、いつも笑顔を絶やさないジェヨンの心理がヨジンには理解できない。そんな中、ジェヨンと客の入ったホテルに警察が・・・・ジェヨンは逃げ場を失い、窓から飛び降りる・・・瀕死の状態で病院に運ばれたジェヨン・・・彼女は、そんな時でも笑顔で、以前客として会った音楽家に最後に会いたいとヨジンにお願いするのだった・・・



 ネタバレ追加


 音楽家の元に向かったヨジン。愛するジェヨンのため、なんとか彼をジェヨンの元に連れて行こうと・・・・・ヨジンは初めて自分の体を犠牲にするのだった・・・・病院に戻ったヨジン・・・しかし、遅かった、間に合わなかった・・・・ジェヨンは亡くなっていた。笑顔のまま亡くなったジェヨン。失意の中・・・・ヨジンは、まるでジェヨンの過ちを浄化するべく、ジェヨンが体を重ねた男と連絡をとり、寝る。そして、ジェヨンがもらったお金を客に返していくのだ。身を犠牲にしたその行動は、客の心も浄化していくかのようだった。彼女と寝た男は、心癒され、自分の本来の戻るべき場所にそっと帰って行く。いつしか、ヨジンの顔は、ジェヨンのような聖母のほほえみになっている。ヨジンの父は刑事だ。妻を早くに亡くした父は、娘に愛情を注ぎ、二人で仲良く暮らしていた。しかし、事件のため、ホテルに行った父は、男と会っている娘を見てしまうのだ・・・・・

娘の行動が援助交際だと知った父は、娘を尾行し、娘と会った男達に復讐しはじめる・・・客の男達からすると罪の後、浄化され、そして罰を受ける・・・そんな図式に見えた。罰を与える父の行動は、どんどんエスカレートしてしまい、もう引き戻す事ができない所まできてしまう。

ギドク監督らしいとおもったのは、登場人物の心理を理解して感情移入させないまま、見れる所だ。映画に引き込まれてるのに、常に傍観者として見てる自分がいる。また、三つの章で変化していく、「水」と「石」の意味。まさにあっぱれです。どこか非現実的に見える描き方が続く中、「ソナタ」のラストでは、現実的な罰を受ける父。そして、これから自分の罪に気づき、苦悩してしまうだろうジヨン。この現実がちょっと弱かった気もしますね。しかし、この余韻が心に痛さを感じさせすぎず、後に訪れる現実を描きすぎることなく想像させる点で、良かったのかもしれませんね。父の愛情が心に痛いです。最後の最後まで娘を傷つけないように気遣ってるのが分かります。

「バスミルダ」の章で、ジェヨンの身元が分からないまま亡くなり、その後ヨジンにジェヨンが乗り移ったかの様に見えたのはなぜだろう・・・。ジェヨンは本当に存在する少女だったのか。多感な時期の少女の心の純粋さ故の罪。そしてその罪に気づかない幼さ。無邪気の恐怖。彼女はヨジンの分身で、彼女自身だったのかもしれない。ギドク監督の作品の中で、私はこの作品が一番好きだと思いました。それにしても、このリアルなクラッシュ音・・・・音だけで、痛かったw「サマリア」


                 

 
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