力道山



 

 日本のプロレス界のヒーロー力道山の一代記を描いた作品。この作品は韓国映画ではあるが、日本人に受けることは間違いない。作風も非常に日本人好みだし、登場人物も力道山役のソル・ギョング以外はほとんどが日本の大物俳優をはじめとする日本人だ。そして何よりプロレスに興味のない私が見ても面白かった。船木誠勝、武藤敬司、橋本真也などの実際のプロレスラーと互角に戦うソル・ギョングも見ものだ。

1950年。力道山(ソル・ギョング)は力士として弟子入りしていた。しかし朝鮮人と言うことで周りからの迫害はひどい状態だった。彼は意を決し、一世一代の芝居をして、協会の菅野会長(藤竜也)に近づく。菅野会長の目に止まった彼は、会長に「力道山」という名前をもらう。そして何か欲しい物はないかと聞かれ、偶然知り合って一目惚れをした芸者のアヤ(中谷美紀)が欲しいと言う。

1951年アヤと所帯を持ち、順調に関脇に昇進した力道山だったが、彼が朝鮮人だからという理由で番付が操作されたのだ。そして純粋な日本人以外は横綱になれないという衝撃的な事実を告げられる。横綱になる。そして皆を見返す。それだけのために今まで10年の間必死で稽古をしていた力道山は落胆し、相撲協会に殴り込み、そして、皆の前で相撲取りの命、まげを切って相撲に決裂する。

自暴自棄になり、酒浸りになる力道山は偶然喧嘩をアメリカから来日していたプロレスラーに止められる。自分は強いと思っていた力道山だが、レスラーは強くて相手にならない。レスラーは力道山の才能を感じ彼をプロレスの世界に導く。力道山はこの未知なる新しい世界を知り、希望を見いだし、この世界の一流になることを決意するのだった・・・。そして・・・





 ネタバレ追加


 彼は、相撲協会から波紋されたにも関わらず、菅野会長に「アメリカにいかせてくれ」と頼むのです。力道山は、あやを残し、一人単身アメリカに。彼はアメリカでめきめきと実力をつけ、有名になり、1953年、ひたすら力道山の帰りを待つアヤの元に戻り、日本にプロレスを持ち帰って来たのだった。

この映画を見るまで、私は全くプロレスに興味もなかった。しかし、この映画を通じてプロレスがなぜあのように国民に愛されたのか。とてもよく分かった。折しも第二次世界大戦に敗北した日本は、どうしても米国人などに恐れを感じていた。そんな中自分より大きな米国人を日本人(力道山は当初自分が朝鮮人だと公表してなかった)が投げ飛ばす。日本人が痛めつける。そして勝利を手にする。なんとも言えない快感が日本国民の中にうまれる。力道山はあっという間に国民のヒーローになった。しかし、頂点に立つと、彼は常にトップに居ようとしてしまった。

時にはプロレス協会の為に負けないといけない事もある。このままではヒーローは力道山一人だし、後継者も出来ないからだ。しかし、彼は日本のプロレスではなく、力道山こそプロレスそのものだと考えていた。

その為、敵をたくさん作りすぎてしまい、少しずつ人生が狂ってしまうようになった。常に頂上に居るということ。それは並大抵のストレスではない。安定剤を常用しないと居られなくなってしまった。それでも彼はどうしても、どんな状況でも「勝つ」事にこだわりすぎてしまった。「たった一度の人生、善人ぶるな。」それが力道山の信念であった。アヤ・・・彼女は一生を通して力道山を支え続け、愛し続けた。有名になり、遊び狂う彼の側でもずっと信じて耐えていた。愛ゆえに、すれ違ってしまったが、それでも最後の最後まで力道山を想いつづけた。すごく切なかった。「大丈夫です。なんとかなりますよ」彼女の言葉に支えられ続けた力道山だったが、彼はもう過去に戻る事のできない八方ふさがりな状況に自分を追い込んでしまっていた。それは良い事だったのか。悪いことだったのか。アヤの為に一度は自分を押し殺そうとしたけど出来なかった。やっぱり彼は「たった一度の人生善人ぶれなかった」のだろう。一生強い力道山で居ることしか選べなかった。そして彼の元から皆が去っていく・・・唯一の理解者であった菅野会長までも・・・。残ったのはマネージャーをしていたヨシマチ(萩原聖人)だけになっても決して信念を曲げなかった。いや、どうしても曲げることが出来なかった。

ソル・ギョング・・・彼はまさに力道山です。すごい俳優というより、力道山そのものです。撮影技術などで子供だましにプロレスの試合の演技をしたのではなく、彼のプロレスは本物のプロレスでした。実際のプロレスラー船木誠勝、武藤敬司、橋本真也などと互角にプロレスしてたのには驚いた!!橋本真也が元横綱のレスラーになって出てきたのにははまり役すぎて笑った(笑)それに日本語。あんな流暢に字幕無しでもわかる日本語を喋った韓国俳優が居ただろうか。もちろん、たどたどしい面もあるが、日本国内で何年も活躍している韓国芸能人並に(ユン・ソナなど)完璧に耳で聞いて理解できる。今まで「ロストメモリーズ」のチャン・ドンゴンはすごいと思っていたが、比にならない。「将軍の息子」で日本人役をしたシン・ヒョンジュンは、日本語のセリフに納得がいかず、自分のセリフを再び吹き替えるというこだわりも見せ、びっくりさせられたがそれ以上だ。まさに彼は『力道山』そのものだった。

もし・・・最後、力道山が刺され、腹膜炎を併発して亡くなってなかったら・・・アヤとの愛をもう一度確かめられたかもしれない。それがとても切なかったです。力道山は、私の産まれる前のヒーローです。でもこの一代記を見て分かった。彼はまさにヒーローだった。日本の大勢の心の中に大きな希望を与えてくれたでしょう。力道山世代の人も、そうでない人も、見応えあると思います。「力道山」


                 

 
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